人のカンカクを感じる秋介の話。
僕の世界と君のセカイ
シールの上のダニは身動きが出来るか。
テーブルからゴミ袋の中に移動させたら気付くだろうか。
君の居場所は変わったのだと。
その時の君の認識とはどんなものなのか、僕はそれを知りたい。
僕は神様ではないけど、君を移動させることが出来る。
なんてちっぽけなものか。この世界で僕に出来ていることなんてないのに。
安らぎの家の中も、クサイにおいのゴミ袋の中も、太陽の元にある。
だから変わりはないはずだけど、君は何かを感じるだろうか。
どちらの世界にいたいか、なんていうこと。
僕はただ、この光溢れる世界に浸ってしまっている。
とくに世界の役に立ってもいない。
家族のためにも動いていない。
一体何のために存在しているのか。
それでもゴミ袋の中で生活するのは嫌だし、
シールに捕まって身動きが取れずにいるのもごめんだ。
自由に動けるのに、わがままだっていうことは知っている。
携帯の、あの小さい身体の中に、
何憶という数え切れない可能性と情報が詰まっているということは、
きっと君の頭かどこかにも世界を感じられる部分があるのだろう。
それでもたまに、掃除の最中、君を移動させてしまうんだ。
その中でも、掃除機が一番卑怯なんだと僕は分かっている。
君は気付いただろうか。
君の歩くセカイが変わったのだということを。
ある日訪れた家。
光と風が部屋をさわやかに彩っている。
ホコリがなくて何も滞ることなく気が流れているような、そんな印象。
だから肌を撫でる風も気持ちが良いのだろうか。
そこに住む僕の友人の弟であるコロウという少年は、
絨毯の上に座っていた。
居間のテーブルと、大きな光の入る窓の間で、
ペタペタと細かいゴミをシールで集めているようだった。
日常の一コマ。
そんな世界があるのだと、僕は君のカンカクを感じた。
君は、君の歩く世界が変わったことに気づかない。
シールの裏からもう逃れられない。
僕は君の行き先を考える。
だからと言って僕は彼の行為を咎めない。
これが君の日常の一コマ。
最後までお読みくださりありがとうございます。
大分前の物語ですが、久しぶりに読んだら
メンドウクサイ始まりだな、と自分で思いました…。
計算は苦手だけど、細かいことを考えるのは好きです。
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